クヴェヴリ・エミのブログ

JSA認定ワイン・エキスパート&WSET Level3資格保有。ワインについて日々思うことを記していきます。

ソ連人としての矜持

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Georgian Culture x Movie x Wine seminar

岩波ホールで上映中の「葡萄畑に帰ろう」が2月8日(金)で公開終了となります。

 

ジョージアワインのとりもつご縁で、この映画を配給した岩波ホールの原田さんとお知り合いになることができたのも手伝って、特に思い入れの深い映画となりました。

 

 さてこの映画の中に出てくる寓話は我々日本人にとっては基礎知識がないとなかなか分かりにくいネタも多く、本当の意味で楽しめたかどうかはその人のバックグラウンドによるところが大きいという特色のある映画だったように思うのですが、なかでも分かりにくいと思われるのが「国内避難民追い出し省」の存在。

 

数ある映画評を読んでいても、あれだけ物語の筋に影響を与えておきながら「なにやら謎の架空の省庁」という感じにスルーされているのも不思議な感じで疑問に思っていました。

 

この「国内避難民」というのは、もちろんジョージア領土内にあるアブハジア自治共和国の件を痛烈に批判しているものです。

 

たまたまとある文化講座で、首都大学東京ジョージア史を教えてらっしゃる前田先生にお会いする機会があったので、このネタを解説した映画評がほとんどないのは、本当に映画を観た人が理解していないからなのか、それとも日本人にとってはタブーというかどちらかというとアンタッチャブルでセンシティブな案件だからなのか・・・と聞いてみたところ、後者ではないかとのことでなんとなく腹落ちしました。

 

そのあと前田先生が遠い目をしながら「この(アブハジアの)件に(映画の中で)軽く触れただけで流したのは、監督の『ソ連人としての矜持』なのでしょうねぇ・・・」と語っていらしたのが、とても心に残りました。