ヤンターリとカリニングラード
先月、モスクワを7年ぶりに訪れてジョージア(旧グルジア)ワインについてあらためて考えたことがあるので記しておきます。
それは巷で「オレンジワイン(Orange wine)」という言葉があふれ、そしてその言葉が指すワインのことを、ワイン発祥の地ジョージアでは「アンバーワイン」と呼ぶんですよということが言われるようになり、そういったことを知ったところで「へえ」となって、何故彼の地の人々がわざわざ「それはアンバー(琥珀色)というんだよ」と言い直すかというところに注意が払われていないのは如何なものか、と考えるからでもあります。
ロシアで土産物の露店を巡っていると、定番の土産物品が何パターンかあるのにすぐ気付きます。マトリョーシカ、グジェリの陶器、ホフロマ塗りの漆器、毛皮製品、そして琥珀。
琥珀はロシアの飛び地であるカリニングラード州の名産品で、ネックレスやイヤリング、指輪などの宝飾品が陳列されている売り場をいたるところで見つけることができます。カリニングラードの"琥珀"(ロシア語で「ヤンターリ」)といえば、ソ連時代から人気の土産物品だったからです。
そして、かつてジョージアはソ連の一部でした。ジョージア(当時はグルジア)のワインといえばソ連を代表する銘酒といって差し支えないでしょう。
従来ワインの色調を表現するのに、赤ワインであればルビーやガーネットといった宝石の色に譬えるものでした。
かつてソ連の一部であった地域のワインを、ソ連を代表する美しい石の色にたとえて表現することはごく自然なことではないでしょうか。
少なくともそれは、西洋でいうところの「オレンジワイン」などという薄っぺらいマーケティング用語に対するアンチテーゼであり、ワインの基本に立ち返って自国のワインを誇りをもって表現する姿勢のようにも感じられるのです。
ちなみにサペラヴィの赤ワインの色は、ピジョンブラッド(Pigeon Blood)と表現します。これは最高峰のルビーの名称だそうです。